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玉掛け作業用吊り具(スリング)の紹介



玉掛け作業用吊り具(スリング)の紹介

工場や建設現場をはじめ、重量物を扱うあらゆる作業において、玉掛け作業は安全と効率の要です。この作業に不可欠なのが、荷物とクレーンを繋ぐ吊り具(スリング)です。

この記事では、玉掛け作業の安全を支えるために、主要なスリングの種類を分類し、それぞれの特性(メリット・デメリット)について詳しく解説します。これにより、現場での最適な吊り具選びと安全管理の一助となることを目指します。

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スリングとは

スリングとは、クレーンなどの大きな機械で「重い荷物(玉)」を吊り上げる際に、荷物とクレーンのフックを安全に繋ぐ役割を果たす道具のことです。
工場や建設現場では、このスリングを荷物に掛けたり外したりする一連の作業を「玉掛け(たまかけ)」と呼びます。

スリングの種類

スリングには、主に使われる素材によって大きく分けて3つの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。荷物の種類や作業環境に応じて、最適なものを選ぶ必要があります。

スリングは単に荷物を吊り上げる道具ではなく、その素材や構造によって耐荷重性能や柔軟性、さらには使用できる環境条件が大きく異なります。

安全かつ確実に作業を進めるためには、吊り上げる荷物の形状、質量、重心、そして作業環境を考慮し、適切なスリングを選定することが極めて重要ですので、その3種類のスリングの特徴を以下に解説していきます。

スリングの種類

ワイヤロープ

複数の細い鋼線を撚り合わせて作られた、最も一般的に使用されるスリングです。

メリットとデメリット

【メリット】

  • 高い強度と耐久性があるため、重量物の吊り上げに適しています。
  • 安価で入手しやすく、多くの現場で標準的に利用されています。
  • 高温での使用がある程度可能です。
  • 使用荷重に対して比較的細く、取り回しがしやすいです。

【デメリット】

  • 荷物の表面にキズをつけやすい(特にデリケートな製品)。
  • キンク(よじれ)が発生しやすい。一度キンクすると強度が大幅に低下します。
  • サビ(腐食)に弱いため、湿気の多い場所や屋外での保管・使用には注意が必要です。
  • 点検がしづらい(内部の摩耗や素線切れの発見が難しい)。

使用禁止となる基準(クレーン等安全規則 第215条)

事業者は、次の各号のいずれかに該当するワイヤロープを、玉掛用具として使用してはならないと定められています。

  1. ワイヤロープ一より(ひとより)の間において、素線(フィラ線を除く)の数の10パーセント以上の素線が切断しているもの。
  2. 直径の減少公称径の7パーセントをこえるもの。
  3. キンクしたもの。
  4. 著しい形くずれ又は腐食があるもの。

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繊維スリング(ベルトスリング)

ポリエステルやナイロンなどの合成繊維で作られた、ベルト状(平ベルト)または袋状(ラウンドスリング)のスリングです。

メリットとデメリット

【メリット】

  • 軽くて柔らかく、持ち運びや取り回しが非常に楽で、作業負担を軽減します。
  • 荷物の表面にキズをつけにくいため、デリケートな製品の吊り上げに適しています。
  • サビの心配がなく、屋内やクリーンルームでの使用に優れています。
  • 安価で、色分けにより使用荷重が判別しやすい製品が多いです。

【デメリット】

  • 鋭利な角や突起に非常に弱く、必ず当てものをする必要があります。
  • 熱に弱いため、高温環境や溶接火花が飛ぶ場所では使用できません。
  • 紫外線(日光)に当たると徐々に劣化し、強度が低下します。
  • 摩耗や損傷が見えにくい場合があり、頻繁な点検が必要です。

使用禁止となる基準(クレーン等安全規則 第218条)

事業者は、次の各号のいずれかに該当する繊維ロープまたは繊維ベルトを、クレーン、移動式クレーン、またはデリックの玉掛用具として使用してはならないと定められています。

  1. ストランドが切断しているもの
  2. 著しい損傷又は腐食があるもの

チェーンスリング(吊りチェーン)

熱処理された合金鋼の鎖(チェーン)を連結させたスリングです。

メリットとデメリット

【メリット】

  • 耐熱性・耐摩耗性が非常に高く、火花や熱が発生する現場に最適です。
  • 鋭利な角がある荷物に対しても、当てもの(保護材)なしで使用できることが多いです。
  • 連結部品を交換することで長さの調整が容易にでき、損傷しても部品単位で修理が可能です。
  • 耐久年数が長く、適切にメンテナンスすれば長期間使用できます。

【デメリット】

  • 非常に重いため、玉掛け作業者への負担が大きい。
  • 荷物の表面に大きなキズをつけやすい。
  • 使用限界を超えて吊ると、破断前に伸びることがある(点検の重要性が高い)。
  • 他のスリングに比べて高価です。

使用禁止となる基準(クレーン等安全規則 第216条)

事業者は、次の各号のいずれかに該当するつりチェーンを、クレーン、移動式クレーン、またはデリックの玉掛用具として使用してはならないと定められています。

  1. 伸びが、当該つりチェーンが製造されたときの長さの5パーセントを超えるもの。
  2. リンクの断面の直径の減少が、当該つりチェーンが製造されたときの当該リンクの断面の直径の10パーセントを超えるもの。
  3. き裂があるもの

まとめ

本コラムでは、玉掛け作業に不可欠なワイヤロープ、繊維スリング、チェーンスリングの3種類を比較し、それぞれの特性と、法律で定められた使用禁止基準を解説しました。

1. 吊り具選びは「適材適所」
ワイヤロープ: 高強度だが、キンクと錆に注意。
チェーンスリング: 耐熱・耐摩耗性に優れるが、伸び・摩耗を厳重に点検。
繊維スリング: 軽くて荷物に優しいが、熱と角(カド)には極めて弱い。

吊り荷の重さ、形状、作業環境を正確に把握し、その場で最も安全性が高いスリングを迷わず選定することが、事故を防ぐ第一歩です。

2. 法定基準は「最後の防壁」
クレーン等安全規則が定める使用禁止基準は、スリングの強度が破断の危険域に入ったことを示す警告です。

素線切れ10%以上、伸び5%超、き裂(ひび)など、一つでも該当したら即座に廃棄してください。

安全は、「これくらいなら大丈夫」という安易な判断で崩れます。日々の作業前の厳守点検を徹底し、ルール通りに不適格品を排除すること。これが、玉掛け作業における最大の安全対策です。

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